ブラックホール
<過去日記> 2011年12月9日 術後7日
昨日 すまし汁 小さなお椀 30分
今日 カロリーメイト 1本 40分
かけて食べた。
ほんとに冗談みたいにゆっくりじゃないとダメなんだ。
お昼は1時間半かかって今までで一番食べられた。
相変わらず眠れず、睡眠薬もダメ、鎮痛剤もダメで朝になった。
若いから昼間寝てなくて歩いてても疲れないらしい。看護士さんいわく…
術後10日くらいしたら、痛みもだいぶ引いてきて眠れるようになりますよって言われたけど、あと3日でそんな風になるとは全然思えない。
リハビリはいつから?って聞いたら、ケイコさんは自分でちゃんと歩いてるからいいですっていわれた。
皆さんは歩いてって言っても、自分ではなかなか痛いから嫌だとか言ってやらないから、強制的にスケジュール組んでリハビリルームへ行くようになっているらしい。
今日、生検の結果が出て両親と一緒に先生から術後の報告と説明を受けた。
腹腔鏡手術で胃と胆のうを全摘して、胃の周りのリンパ節を29箇所郭清
印環細胞がんでステージ1Aの早期癌
リンパ節への転移はなし
腹水細胞にも悪性所見なし
ガンが再発する可能性はほぼ100%なしだって!!
両親は安心して力が抜けていた。
先生たちも最初は次のステージ位まで進んでいるかもと考えてたそうで、
非常にいい結果でよかったって言ってくれた。
あと半年見つかるのが遅かったら、若いし進行が早くて手術もできないほど手がつけられなかったかもしれないと言われた。
幼なじみTちゃんが駆けつけてくれて、二人で嬉し泣きした。
Tちゃんなんて「そんなはずない!もう一度わたしが先生にちゃんと話を聞いてくる!」っていうほど信じられない良い結果だった。
母なんて「また私たちだけ呼ばれて、実は・・・って悪いこと言われるのかと思っていた」らしい。
改めて生かされたなって思った。
みんなからもらったメッセージを読み返しながら、ひとり病室で感謝の嬉し泣きをしました。
生きられる!!
私、がんが見つかる2ヶ月前に会社の健康診断受けて何も問題ないっていう結果が出ていたのに半年遅かったら手術もできなかったかもなんて・・・。
最初に告知された時に、かかりつけの先生に
「先生、わたし会社の健康診断の時にバリウム飲むとすごい具合悪くなって、午後から仕事ができなくなるから今年はいいやってパスしたんですけど、もし、そこでバリウム飲んでいたらもっと早くわかっていましたか?」
って聞いたら
「いや、このがんはバリウムじゃわかんないんだよ。粘膜の下でどんどん広がっていって、最初は自覚症状もないから。でも、自覚症状が出た頃にはもう手遅れってことがほとんどでね。
でも、胃カメラやっていたら半年前でもわかっていたと思う。」って言われて
えー、バリウムってあんなに辛いのにそんなもんなのか。じゃあ、最初から胃カメラの方がいいじゃん!てことで、わたしの周りの人には
「胃カメラの方がいいよ」って言ってます。
それと、母も40歳で胃がんになって、わたしも36歳でなったから
「妹さんも一度検査しておいた方がいいかもしれませんね。」ってお医者さんに言われて
当時34歳だった妹はあわてて人間ドッグ受けていた。
<過去日記> 2011年12月10日 術後8日
今日はいい天気みたいだね
相変わらずお腹のチューブが抜けず、これで10日間シャワー浴びれず。
毎日2回体拭いてるし、パジャマも2回着替えてるから、
家族曰く「全然臭くないよ」
こうなったら記録作ってやる!
生まれてこのかたこんな経験したことないし、初シャワーはさぞかし気持ちいいんだろうな~。
<過去日記> 2011年12月11日 術後9日
まだお腹のチューブ取れないけど、16か17くらいに退院できるかな?って。
私の予定だとあと2日で退院だったけど、そんなに予定どおりにいかないこともあるか。
毎日廊下を何往復も歩いていたら、顔なじみの人ができた。
ほんわかしたあったかいオーラが出ていたおばあさんに
「いつも一生懸命歩いているわね。あなたはどうしたの?」
って声かけられてお友だちになった。
もう一人、いつもそのおばあさんのお世話をしてあげている元ヘルパーさんのおばさんも。
自分だって2回も手術してしんどいのに、いつも人のために何かしてあげていた。
何も言わなくても、その人の生き様とか人柄って滲み出てくるものだな。
こうやってみんなおんなじパジャマ着て、素の姿になるとなおさら。
あと大腸癌の手術をして人工肛門のパウチをつけたおじさんと4人でよく廊下を歩いていた。
なんかみんな爽やかで、自分の置かれた状況を受け入れて愚痴もこぼさず
ただただ歩いていて、ときどきすれ違い様に微笑みあっていた。
遠くから廊下を歩いてきた看護師さんが立ち止まってその光景を見て
「やだ」
「みんな偉すぎ。なんか涙出てきちゃった。」
って言いながら、ほんとに涙ぐんでいた。
<過去日記> 2011年12月12日 術後10日
二日間連続で朝まで眠れたからか、すっかり体が軽くなってきた!
看護師さんが言った通り、術後10日過ぎたら急に良くなってきた。疑ってごめんなさい。
今日は退院後の栄養指導を栄養士さんから受けたんだけど、
「この食べっぷりなら問題ないです」って言われ、母と笑った。
食べれない人は本当に何も食べれないらしい。
私はあのダンピング以来、『物思いにふけり法』っていう自分なりの方法で、
一口食べたら箸を置き、100回噛み、物思いにふける…というのを繰り返して、
1時間半かけてご飯たべてる。
看護師さんがカーテンの隙間からわたしの様子をそーっと見にきていたのがわかった。
もう食べていなかったら食器を下げようと思ってきたみたいだけど、
わたしが正面を向いて座って、カーテンの一点を見つめながら100回噛んでいる姿を見て
また何も言わずに黙って戻っていった。
「大丈夫?」とか
「頑張って」とか
「無理しないでね」とか
そういう言葉を一言もかけられなくても、ただただ見守ってもらっているのがわかっていた。
昨日の夜から、お粥じゃなくて白米を食べるようになりました。美味しい。
この間TVでもんじゃ焼きがでてて「美味しそう~」って思ったけど、もんじゃならちょっとずつ食べればいいし、ドロドロだし、キャベツもいいし、素敵な食べ物だ。
<過去日記> 2011年12月13日 術後11日
今日で入院生活2週間。
もう帰りたいな~
<今日のお昼>
☆おかめうどん
☆カブとニンジンの煮物
☆バナナ
バナナは完食。うどんは10分の1位?食べた。
今日TVでやってた名古屋のカレーうどんが超おいしそう…
1年くらいしたらカレーも食べれるそう。リスト入り決定!
<過去日記> 2011年12月14日 術後12日
社長がお見舞いに来てくれて、私のなくなりかけの化粧水とハンドクリームを買ってきてくれた。
社長にパシリのようなことさせて申し訳ない。お花の代わり。
今って病院にお見舞いに行くのにお花持って行っちゃいけないのね。
お花とかグリーンがあれば、癒されるのにな。
社長が来るからわたしはいつもの病院のパジャマじゃなくて、いただいたジェラードピケのネグリジェを着て少しドレスアップしてお出迎え。
看護師さんが「さっき、外国人の方がいらっしゃってましたよね?」っていうから
「うちの社長です」って言ったら
「えー、◯◯◯◯の社長さんだったんですか!」ってちょっと興奮していた。
夜は会社の人たちが来てくれて、部署の人全員がそれぞれに私の為の一冊というお題で選んでくれた本をどっさりくれた。
モルディブ、パリ、世界遺産とかの旅行ものや、デザイン画集やら、心に残った小説やら。 選んでくれた人の顔が思い浮かんできてワクワク
細かい字は疲れるからまだ読む気がしないんだけど、雑誌の差し入れとかはすごく嬉しかった。
みんな私の驚異的な回復力にビックリしていた。
明日チューブが取れますように…
<過去日記> 2011年12月15日 術後13日
今、最後のチューブが取れた!
麻酔も何もなく、
「ちょっと気持ち悪いですよ〜」
って言いながら、先生がお腹の穴からズルズルってひっぱったら取れた。
え?なにこれ?
ブラックホールみたい
この先どうなってるの?どことつながってるの?
体にこんな穴空いているのに痛くないって不思議
シャワーの時も傷口を石鹸で自分で指入れてしっかり洗ってくださいねって言われた。
自分のお腹に空いた穴に指入れて洗う?!
ロックだね。5箇所空いているよ。
今ならピアスつけ放題。
人間の体ってすごいな~
今日の夕方シャワー浴びれるって!15日ぶりだ!!
ヒャッホー!
シャワー浴びたあと、横向いて寝てたらダーって液が出てきた
目が覚めた時、お腹の周りがびちょびちょで一瞬
「え?まさかのお◯らし しちゃった?」って焦った。
さっき先生に見てもらったら問題ないって。
傷口は洗ってもしみないし、痛くもない。
みぞおちのあたりの切ったところは5センチくらい。
縫っていなくて接着剤でついてる。すごいなぁ、ここから胃と胆のう取り出したのか〜。
お腹から出てくる水が相変わらず減らないのを
「えいやー!」って決断して抜いたからまだ出てきちゃったみたい。
朝ぽっかり開いてた穴が、夕方にはもう小っちゃくなってて人間の体ってすごい。
昨日社長に「これから何かやりたいことある?」って聞かれて
「食べ物のことしか考えられないです。
あとは家族写真撮りたいのと、しばらく会ってない97歳の祖母に会いに行きたい」って話をした。
今日は餃子食べたいな~って思った。良くなってる証拠かな?
<過去日記> 2011年12月16日 術後14日
朝ガスが溜まってお腹が痛い。
明日退院のつもりだったけど、できず・・・
あ~あ~床ずれじゃないけど、お尻の骨が痛い。
こんなことになるなら、今年前半ダイエットなんてしなきゃよかったと思った。
あの分のお肉があればこんなにお尻痛くなかったのに。
今はまるまるモリモリめざしてる。
でも、昨日の朝ぽっかり開いてたお腹の穴は完全に塞がっていた!
若いからですよと言われた。
15時半ごろ急にお腹痛くなって痛み止めを飲む。
多分お昼に食べたさつまいもだと思う。
Tちゃんが買ってきてくれたドトールのシナモンロールを夜食にこっそりいただく。
甘くておいしいな。こんなにおいしかったかな。
<過去日記> 2011年12月17日 術後15日
胃を取ってから空腹感というものがなくなった。
でも、生つばごっくん!おいしそ~っていうのはある。
築地グルメのサイトでお寿司見てそうなった。生ものはしばらくたべれないけど…
今一番食べたいのはチーズトースト!!退院したら絶対に食べるんだ。
空腹感と満腹感が無くなったから、いつも時計を見て食事をしていました。
何時だから食べなきゃ。とか
時計を見ながらペース配分を考えて、あ、早過ぎだとか。
10年経った今も、胃があった頃のお腹ぺこぺことか、お腹ぱんぱんという感覚はないかな。
血糖値が下がってきて、フラフラするからご飯食べなきゃとかお腹すいたなとは思う。
お腹ぱんぱんというよりは、入っていかなくなる感じがあって、胸の上の方が。
そろそろやめておきましょうってなる。
さて、もうそろそろ退院なわけですが、病院の中で出会った人たちのことを少し書いていこうと思います。
次は「お掃除のおばさんに喝入れられる」です。