胃なしケイコの【日日是散歩】(にちにちこれさんぽ)

36歳で胃がん(印環細胞癌)に 胃と胆のう全摘から10年目の記録

最高の死に方についてイメトレしていた私と愛猫の死 後編

 

今年のGWに妹の18歳のミニチュアダックスが老衰で亡くなってしまった次の日から

そうが急に元気がなくなり体調が悪くなった。

 

そうについては

『最高の死に方についてイメトレしていた私と愛猫の死 前編』をご覧ください

 

coolpassion.hatenablog.com

 

2年前にも体調が悪くなって病院に連れて行ったら、腎不全の初期症状だと言われた。

その時は皮下点滴を毎週病院で打ってもらって毎回お金も飛んでいったし、何よりそうがめちゃくちゃ嫌がって暴れた。

先生方はとても優しくて親切だったけど

カルテに「猫パンチ炸裂」って書いてあった 笑

これをずっと続けるのは無理だなと思っていたけど、しばらくしたら落ち着いて元気になってよかったね〜

でも、もう次は歳も歳だし可哀想だから静かに家で看てあげようよって家族と話していた

 

我が家で昔飼っていた犬は病院で手術して帰って来たその晩に痛々しい姿のまま死んでしまったから

こんなことになるなら手術なんてしないであげればよかったねとみんなが後悔していた

 

5月2日から具合が悪くなってきたそうがご飯を食べられなくなったのが6月9日

それまでに普段ならしない私の部屋で一晩寝ていったり

ヨガのオンラインレッスン中にヨガマットの上からずっと退かなかったり

 

1階の仕事場に来てみんなの仕事をしている様子を見にきたり

なんて今までしたことがないことをしていた

 

トイレ以外の場所でマーキングするようにいろんなところでおしっこをするようになった

洗濯物の上、トイレの後ろの狭いところで壁に向かっていたり、ヨガマットの上にもしてしまったり

 

夜中に大きな声で鳴いたりして、ボケちゃったのかな?なんて言ってただけど

今思えばあれは痛かったんだろうか

 

私と家族は覚悟を決めた

そうちゃんをしっかりと家で看取ってあげよう

 

食事を食べなくなった猫がどれくらいの期間で死んでしまうのかネットで調べたり

最後はどんな症状になるのか

どんな行動を取るのか

人間がなくなる時は引き潮の時が多いって聞くけど

動物もそうなのか?

 

私は最後は絶対に自分の腕の中で抱いてあげたいと思って

毎日の引き潮の時間を調べた

夜中の2時、3時でもその30分くらい前からアラームをかけておき

家族には朝、その日の引き潮の時間を伝えて、なるべくその時間に誰かしら起きておくようにした

 

私はそうがご飯を食べなくなってからは自分のベッドで寝ないで

ヨガマットと枕、ブランケットを抱えて

そうが行くところ行くとろこ追っかけみたいについて行き、そこに寝床をセットして

見守りながらウトウトしていた

 

そして朝がくると

「新しい朝がきましたよ そうちゃん。すごいね」と声をかけて撫でてあげた

 

そうは普段みんながいるリビングの椅子の上にいるのか、大好きな母のベッドの上で寝ていた

おしっこが漏れてきちゃうようになったので、Amazonで猫用のおむつを慌てて買った

最初は慣れないで嫌がったけど、段々とこちらもおむつ装着のプロになって手早く3秒でできるようになったし

全然匂いもしないし、買ってよかった

 

おむつをしていても、いつものトイレがある3階まで階段を上がっていこうとして

ご飯を食べていないでふらふらだし、下半身がだんだん動かなくなってきているようでしんどそうだったので

そうがムクっと起き上がると、抱っこして上まで連れていき

おむつしているけどトイレに入ってそこでおしっこをしているのを横で待って

また抱っこして下まで降りて横で寝ていた

 

食事が取れなくなってからも、そうが大好きだったものだったら少しは食べらるんじゃないかと思って

牛乳をあげてみたり、ペリペリっという音がするだけで飛んできていたスライスチーズをちぎってあげたり、

缶が開く音がするだけですっ飛んできたツナ缶をあげてみたりしたけど

全く興味を示さなかった

 

こんなことになるなら、もっと好きなだけ食べさせてあげるんだったと思ってしまう

 

ご飯を食べられなくなって10日間が過ぎても、水だけは飲めた

水もすぐ飲めるように器に入れておいてあげたけど、

いつも飲みに行く3階のベランダにある水場で飲みたいらしく

上に上がっていこうとして、水が飲めなくなるまでは自力で階段も1日何回も登っていこうとしたけど

途中で倒れそうになる時もあったから付き添っていった

 

ネットにも書いてあったけど、最後の方は冷たいところに寝たがって夜もベランダのコンクリートの上にベタッとなってたり

フローリングにベタッとなったりしていた

 

これは昔飼っていた犬もそうだったけど

亡くなる前ってみんなのところに挨拶に来る

 

今まで1階の仕事場になんて降りてきたことがないのに

昼間でも降りてきてみんなの仕事している様子を後ろからパトロールして

ミャ〜なんて声をかけてきて みんなびっくりした

 

外をじーっと眺めたりしていたから

抱っこして外に連れて行って、家の周りを抱っこしたまま散歩した

元気な時だったら、こんなことしたら腕から飛び出してどこかへ行ってしまいそうで怖くてできなかったけど

すっかり動けなくなって私の腕の中で大人しく抱かれていた

 

そして、父が育てているたくさんの花を一緒に眺めたり、メダカを覗いたりして

「風が気持ちいいね〜 お花がきれいだね〜 メダカさんが泳いでいるよ」なんて話をしながら

ゆったりとした時間を楽しんだ

 

それは私が自分が死ぬ前にしたいことでもあった

病院に入院していた時、空を眺めたかったし風を浴びたかった

お見舞いにお花は禁止されていたけど きれいなお花を見たかったし香りを楽しみたかった

 

そうが小さい頃、私がよく歌ってあげたオリジナルの歌が2つあった

1つは『ゾウさん』の替え歌

「ぞ〜うさん、ぞ〜うさん」のところが「そ〜うちゃん、そ〜うちゃん」となる

 

もう一つは『さっちゃん』

「さっちゃんはね さちこっていうんだ 本当はね」のところが

「そうちゃんはね そうっていうんだ 本当はね」ってなる

 

それを子守唄のように歌ってあげると喉をゴロゴロ鳴らして甘えていた

 

だからこの歌も何度も歌ってあげたけど

もう、ゴロゴロは言えなくなっていた

 

だけど、歌を歌う時の振動が私の体からそうちゃんに伝わり、そうちゃんの体がそれを受け入れている感覚はあった



そうは母がマッサージ機にかかる時は必ず飛んで行って

母のお腹の上に乗り、一緒にブルブルとマッサージをされるのを楽しんでいた

 

そうが母のベッドで寝るときに一緒に寝ていたシロクマの枕を隣の置いてあげた

好きなものが近くにあったら落ち着くかなと思って

 

そうは寝ている時も目を閉じなくなりずっと開いていて

目からは涙が出ているように見えた

目脂がついちゃうから顔を濡れたタオルで拭いてあげたり

耳の中をきれいに掃除してあげたり

 

食事をしなくなってから1週間くらい経った時に

おむつをとったらうんちを2つした

いつのよ!?と思ったけど、便秘になっていたのかもしれない

かわいそうに もっと早くにマッサージとかして出してあげればよかった

 

お風呂でお尻をきれいに洗ってあげた後、乾くまでしばらくそのままにしておいてあげたら

今度は柔らかい粘液のようなものが出て

お腹の中に残っていたものが全部出てきたようだった

匂いもすごく臭かったので

またお風呂でお尻を洗ってあげたけど これが死臭っていうのかな?というくらい

洗ってもなんだか体から匂ってきた

 

ドライヤーでお尻を乾かしてあげると気持ちよさそうにしていた

 

そうは粘着テープでコロコロとマッサージをして毛のお手入れをしてもらうのが好きだったから

背骨が浮き出てきてガリガリになってきてしまった体にそーっとコロコロを当ててあげた

気持ちよさそうにしていた

 

夜になるとアレクサに「子守唄をお願い」とか「オルゴールをお願い」とか頼んで

そうちゃんがなるべくリラックスできるようにした



水が飲めなくなる頃には下半身の強張りがひどくなってきて辛そうだった

なんども体の位置を変えていたのが寝返りも打てなくなってきたので

そばにいて何度も何度も寝返りを打たせてあげた

 

私が入院していた時も看護婦さんが夜中に私を転がしにきてくれて

「どんなに若くても寝返りを打てないと一晩で床ずれができちゃうので

痛いかもしれませんが頑張って寝返り打ちましょうね」って言われたのを思い出して

 

そうは体を動かせなくなっても名前を呼んだり、気持ちがいい時、嬉しい時なんかは

ちゃんと尻尾をピンピンと振ってくれた

ちゃんと意思表示をしてくれた



水が飲めなくなって3日目

流石にもうこれ以上は厳しいだろうと思っていた日の晩

干潮は次の日の朝4時半くらいだった

 

私は朝4時にアラームをかけていつもより早くに寝た

私のベッドの下に動けなくなったそうをヨガマットと華やかな柄の風呂敷を敷いた上に寝かせて

「また明日ね。おやすみ」と言って寝かせた

 

パッと目が覚めたのは夜中3時

 

ベッドの下を見ると、寝かせたはずの風呂敷の上からちょっとズレたヨガマットの上に横になっていた

 

自分で動こうとして力尽きたのか?

慌てて、飛び起きて抱き起こしたら冷たくて

嘘でしょ?そうちゃん?って言いながら慌てて

心臓とお腹に手を入れて確認したら

微かに手のひらで呼吸を感じた

 

まだ息がある

走って母の部屋に行き

「もうダメかもしれない!」と叫ぶと

母が飛び起きてそうをベッドに寝かせた

 

私もベッドの下にヨガマットを敷いて母と二人でそうをさすりながら声をかけ続けた

母が「そうちゃん もう頑張らなくてもいいよ ゆっくり休んでいいんだよ」っていうのを聞いて泣きそうになる

 

引き潮の時間、日の出の時間4時半くらいから、そうの様子がおかしくなってきた

時々口をパクパクパクと動かすようになった

苦しそうではないけど そんなの初めて見た

 

そして少し低い声でウーンと何度か鳴いた

「そうちゃん 大きく吸って〜 大きく吐いて〜」と言いながら背中をさすって上げると

それに合わせるようにゆっくり呼吸をくりかえした

そうがご飯を食べられなくなってから、ずっとそうの呼吸をカウントしてきたけど

かなりゆっくりした呼吸になってきた

 

私が抱き上げてあげると

フワッと力が抜けて楽になった感じだった

 

体はあったかくなったし 心臓は元気にドクドク動いていて これがそんなにすぐ止まるようには思えなかった

父が起きてきて

「そう、大丈夫か?あぁ、もうこんなに力がなくなっちゃって・・・」って言いながら

いつものようにて荒く頭を撫でてあげた

 

私はもう間も無くお迎え来ると感じて

 

スマホでピアノの曲を流してあげた

私が死ぬ時に聴きたい曲

「人生のメリーゴーランド」

戦場のメリークリスマス」を聴きながら静かな時間を過ごした

 

母が「いい曲ね」って呟いた

 

3曲目の「ショパンノクターン 遺作」が流れている時

そうが片足をストレッチするように伸ばした

もう片方の足を伸ばし終わった後

 

スーッと力が抜けて

頭がカクっとなった

 

フワッと煙が上に登っていくように

そうが天国へと旅立った

夏至の日の朝5時21分

 

私の腕の中でまあるく軽く沈んだそう

 

「死んじゃった」

「死んじゃったみたい」

「そうちゃん そうちゃん」

母と父を交互に見ながら言うと

 

「ほんとだ・・・あぁ・・・首が力が抜けちゃった」

父はたまらなくなり部屋を出て行ってしまった

 

さっきまであんなにしっかり動いていた心臓があっけなく止まってしまった

 

母が

「抱かせて」と言い

抱っこすると

「まだあったかいじゃない 生きてるみたいじゃない そうちゃん」て

言いながら撫でていた

 

顔がスーッと白くなったけど

信じられないくらい穏やかできれいな顔で

こんなにきれいな顔で私も死にたいと思ったくらいだった

 

悲しみに浸っている暇はなく私は

体が硬直してしまう前にきれいに整えてあげようと

 

3日前くらいから準備していた箱を持ってきた

そこにそうがいつも寝ていたネコ柄の毛布を敷いてあげて

好きだった餌を入れてあげた

 

ロックアイスを二つに分けてタオルで包んで

腰のあたりとお腹の辺りにおいてあげてから

 

葬儀屋さんをネットで探した

 

いずれ土に還してあげて花の咲いているところの下に埋めてあげたいけど

私は傷んでしまう前に火葬して骨にしてあげて

そのお骨をそうちゃんの最初の飼い主である元彼にも分けてあげたかった

 

近所の葬儀屋さんに連絡をしたら夕方来てくれることになった

ドライアイスを用意した方がいいか聞いたら、1日なので氷で十分ですよと言われた

 

そうの体は硬直してすぐに動かなくなってしまった

目を閉じてあげたかったけど、生きている時から目が閉じられなくなっていたからそのままになってしまった

 

それが余計に生きているみたいで

後から来た妹も

「そうちゃん生きているみたいだね。きれいだからそうちゃんの剥製みたい」と言っていたほど

 

仏様の前にそうちゃんも置いてあげて夕方までみんなと一緒にいられるようにしておいた

 

母がうちに咲いているいろいろな種類の紫陽花を採ってきて側に飾った

私とそうは6月生まれだからね

 

それとその日にお花屋さんから届いたお花も飾った

インスタでそうが亡くなったのを知った私の高校の同級生だった親友が送ってきてくれた

 

そんなに頻繁に会っているわけではないのに 彼女がしてくれたことに

家族みんな驚いたし

彼女にお礼のLINEをしたら

「長い間私の親友を見守ってくれてありがとう そうちゃん」っていう気持ちを込めて贈らせてもらったよって

返信がきて

 

それを見たら涙腺が崩壊して声に出して号泣してしまった

 

なんでみんなこんなに優しいの

 

私が病気になって入院して手術した時もそうだったけど

私は人にこんなに優しくできるだろうか・・・

 

白とピンクのお花は優しくそうを飾ってくれた

 

葬儀屋さんが来る前に30分くらい冷たくて硬くなったそうを抱っこしてしばらくソファで時間を過ごしていた

私のお腹の上にいたらちょっとだけ温まって解凍されて息を吹き返すんじゃないかって思うほど

今にも動き出しそうだった

 

 

葬儀屋さんの車が来た時、小雨が降ってきて

みんなで家の前に停められた車の前でお焼香をして私が段ボールから出して台の上に乗せて

そうちゃんの餌や紫陽花の花できれいに飾ってあげた

最後に撫でて一度離れたけど

やっぱりもう一度って撫でて

「そうちゃん またね」って言って送り出した

 

 

1時間半ほどしてそうがお骨になって戻ってきた

お骨拾いは希望すればできると言うことだったのでお願いした

 

葬儀屋さんがきれいにそうの骨を並べてくれていて

尻尾や背骨、手の指も形通りに丁寧に並んでいた爪も残っていた

 

きれいな骨だねって言いながら

みんなでお骨を拾って納めた

 

私がお骨を拾ったのは祖父が亡くなった時だから中2の時以来かもしれない

 

仏壇にそうのお骨とお花を飾ってお線香をあげて

「おじいちゃんおばあちゃんたち そうちゃんをよろしくお願いしますよ」って言ってやっと長い1日が終わった

 

13日間まともにベッドで寝ていなかったので体は疲れていた

すごく寂しいし悲しいけどまだ実感はなくて

とにかく最後に苦しまないで私の腕の中でおだやかな顔で天国に行けてよかったということにホッとしていた

 

そうが息を引き取ったあの瞬間

私とそうはお互いにとても満たされていた

それはなんとも言い難い 神々しい瞬間だった

 

生き物が自分の腕の中で息を引き取る瞬間を

生と死の境を全身で感じた

 

私はヨガで屍のポーズ シャヴァーサナを毎回ポーズの最後にやっているけれど

この全身の力を抜くという休息のポーズは

どんな師匠も生きているうちは本当の意味では教えることができないんじゃないか

 

それをそうは最後に私に教えていってくれた

 

あの感触 あの感覚

 

穏やかで安らかな空気

 

あぁ 私もいつかこんな風に死んでいけますように

 

そうちゃん

18年間私の側で見守ってくれてありがとう

 

最後の13日間で私たちに少しずつ死を受け入れる準備をさせてくれてありがとう

ご飯が食べられなくなって水も飲めなくなっていって体も不自由になっていく姿を見ているのは辛かったけど

動物が自然に死んでいく過程を教えてもらいました

 

お腹の中を空っぽにしていき 水を抜いていき 意識がぼんやりしていく

途中で匂いは刻々と変化していきました

亡くなった後に口やお尻から体液が出てきてしまうことがあるので塞いであげましょうとかネットに書いてあったけど

そうの体は全部出し切っていたから、何も出てこなかったし匂いもなかった

 

父も母もいずれ我が身と思いながら最後の時間を過ごした

「なんだか私たちに死んでいくときはこうなるんだよって見せてくれているような気がしてきた」

「生きるって大変ね。死ぬのも大変ね」

 

「そうは偉いなぁ。痛いとか文句も言わないでちゃんとトイレも水も覚えていてこんな体でも自分で行くんだもんなぁ」

 

引き潮の時に亡くなるのはやっぱり関係していると思う

葬儀屋さんが言っていた

「やっぱりそういう波があるので、今日は人間の葬儀屋さんも忙しいみたいです。」

夏至は1年で一番陽が長い日

陰陽のバランスが転換する日らしい

 

私たちは自然の大きな法則の中で生かされているんだな

 

そうちゃん

またね

 

そうちゃんの気配がなくなった家にいるのは辛いわ

生まれ変わったら今度は私が猫になりたい

 

 

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