胃なしケイコの【日日是散歩】(にちにちこれさんぽ)

36歳で胃がん(印環細胞癌)に 胃と胆のう全摘から10年目の記録

告知された時1つだけ後悔したこと 今思うふこと 術後10年

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断捨離しながら考える 卵子凍結と臓器提供

2021年12月2日 術後10年経過

あれから10年生きた。生きられた。

あの時思ったこと。今思うこと。

 

前から見て見ぬフリをしてきたことがある

保険証の更新の度、マイナンバーカードを入手した時

裏側にある

「臓器提供の意思」

※以下の欄に記載することにより、臓器提供に関する意思を表示することができます。

記入する場合は、1から3までのいずれかの番号を◯で囲んでください。

1.私は、脳死後及び心臓が停止した死後のいずれでも、移植の為に臓器を提供します。

2.私は、心臓が停止した死後に限り、移植の為に臓器を提供します。

3.私は、臓器を提供しません。

《1又は2を選んだ方で、提供したくない心臓があれば、×をつけてください》

【心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球】

 

みんなどうしてるんだろう?

「提供しません!」と言い切るまでの強い理由もなく◯をつけていなかった

なんとなく

家族が死後とは言え体に傷をつけられるのは嫌がるんじゃないか?とか

自分も具体的に救いたい人がいるわけでなければ、別にそのままでいいかなとか

 

脳死についてもよく知らないし

心臓停止した場合とどっちを選んだらどうなるかとか

どういうシステムなのかも知ろうともしなかった

 

そんな私の考えに変化があったのは今年に入ってから

自分と両親のためのエンディングノートを用意した時から

誰が先に行くかなんてわからないから

自分の意思をきちんとわかるようにしておかないと

残された人が困るなと

 

10年前にガン告知をされた時にだいぶ断捨離をして

見られたくない昔の手紙とか写真とかはほぼ捨てたし

整理したつもりだったけど

実家にはまだいろんなものが残っていた

 

そのものを私がどういう想いで手に入れたのかとか

どんな価値があるかなんて私にしかわからなくて

残されても処分する人にはわからないし捨ててもらうための時間や手間がかかる

 

エンディングノートには

お金のことやパスワードのことや連絡して欲しい人のことなどや

自分が事故などで意識障害になったり亡くなったりした時のことなどを書く欄もある

 

まずは自分の意思を整理しないと書けないし

持っているものも整理しないと

これはあの人にあげて欲しいとかそいうのも書けない

 

私の場合元々本当に物が少ないし、簡単に整理できると思っていた・・・

のに

 

いざとなると

実家にはいろんなものが眠っていた

若い頃に習っていた華道の花器がゴロゴロ 場所もかなり取る

私以外に花器を使ってお花を活ける人はいない

 

同じく着付教室に通っていた時の着物や小物類

子供の頃から習っていたバイオリン3台

 

捨ててしまうのは簡単だけど

自分の想いがあって捨てられないで取っておいた思い出のものもある

 

そして一番大きかったのは

自分にもし子供ができたら・・・

特に女の子だったら

 

バイオリンやるかな〜とか

着物も着てくれるかなとかどこかで思ってた

 

でも、去年子供は天地がひっくり返っても自分で産むのは無理だなっていうのがわかった

 

10年前ガン告知された時はすごくショックだったし一晩泣きはらしたけど

今までの人生を振り返ってみて

やりたいことをやってきたし好きなことしてきたから明日死んだとしても

親より先に死んでしまうのは申し訳ないと思ったけど

 

1つだけ後悔したことがあった

「子ども産んでおけばよかったな」

 

自分からそんな言葉が出てくるなんて意外だった

 

そうじゃない人生を自分で選んできたし

子供は他人の子でも大好きだけど、どうしても自分の子が欲しいとかはあまり思わなかったし

だから結婚も自分から自由を奪うものだとしか思っていなかった

 

人は死を目前にすると自分の遺伝子を残したくなるんだろうか?

動物の本能なのかな?と思ったりした

 

女性として生まれた以上出産の経験をしたかったとか

周りの友人たちと同じように子育てをしたかったとか

そいうんじゃなくて

 

自分という存在がこの宇宙で生きた証を何かで残したかった

繋いでいってくれる何かが欲しかったのかもしれない

 

術後の生検の結果、転移がなく抗がん剤治療はしなくていいことになった

 

2012年9月某日

健診の時に前から気になっていたことを女性の先生に聞いてみた

 

「私は今後妊娠、出産することが可能なんでしょうか?」

 

「できると思いますよ。抗がん剤治療はしてませんし。

ただ、体力的な問題がありますけどね~」

とサバサバっと言われた。


確かに、自分の栄養摂取するのもやっとだし、年齢を考えたら健康な人でも妊娠しにくくなっているんだけど、可能性はゼロではないことが分かった。

抗がん剤放射線治療をすると副作用で不妊になってしまうので、未婚のガン患者は治療前に卵子凍結ができるらしい。
でも、それも35歳まで

病気になるまで知らなかったこといろいろあるわ。

 

この当時に私が調べたら卵子凍結は35歳までと出てきた

私の年齢は36歳だったからそこでもショックを受けた

 

 

2021年の今調べてみると43歳未満までに変わっていた↓

 

厚生労働省は1日、若年のがん患者が治療で生殖機能が低下・喪失する前に卵子精子などを凍結保存する「妊孕(にんよう)性温存療法」について、4月から始める助成制度の内容を公表した。同省はこの日の検討会で、卵子なら1回20万円を助成額の上限とし、1人2回までなどとする方針を示し、おおむね了承された。
 卵子精子の凍結保存は、高額な自費診療となっている。若年患者にとって経済的負担が大きく、国の支援を求める声が上がっていた。
 厚労省によると、助成額は受精卵で1回35万円、精子で1回2万5000円を上限とした。所得制限は設けず、男女とも凍結保存時に43歳未満であれば対象とし、年齢の下限は設けない。関連学会に登録し、都道府県が指定した医療機関で凍結保存することを条件とした。

 

うっすらと希望は持っていたし、元気になれば普通に妊娠もできると思っていた

でも、術後5年経過する頃から貧血はひどくなり

病院で定期的に点滴を受けるまでになってきた

 

その頃41歳さすがに焦ってくる

 

今までの人生であまり人のことを羨ましいとか思ったりしたことはなく

(すごいなとかはあっても)

自分は自分と思って生きてきたけど

子どもがいる人のことが羨ましく思うようになった

 

子育て中の友達が本当に大変そうにしていて

でも、その中でその人自身がすごく人間的に成長しているんだな〜っていうのを目の当たりにすると

子育てしていない自分て、なんか人として欠如したまま生きているような気がしてきたり

 

結婚はとりあえずおいておいて

子どもだけはなんとかならないだろうか?

 

まだ結婚していない元彼に頼んでみようか真剣に悩んだりもした

生命力の強そうな遺伝子を持ってそうな男性がいいと思えてきた

 

「種」について考えていた時もあった

私が好きな花とか植物を育ててその種を採り、それを大事に保管しておいて

私がいなくなった後に好きだった人たちに配ってもらって

その種を植えてもらったら、私のこと思い出したりしてくれるかなとか

そしたら地球のどこかで私が風に吹かれているような感じがするかなとか

 

知り合いの薬剤師さんの話を聞いてから、生理のたびになるべく子宮に負担をかけないように

ピルを飲むようにしたりもした

 

でも会社でストレスが溜まることがあると体は正直で生理が止まってしまった

自分の気持ちの中ではなんとか頑張ろうと思っていても

もう絶対に無理はしないようにしようと思っていたので体の声を聞くことにして

会社を辞めた

 

それでも体はすぐには戻ってくれない

1ヶ月があっという間に過ぎていく

 

紹介してもらった中医師の先生のところへ血液検査の結果や今までの病気の経緯などもまとめて書いたものを持っていったら以前のブログでも書いたことを言われた↓

 

「これは…普通の人だったら立っていられないよ!

頭もボーッとして思考が停止してしまうくらい

 

胃を全摘して9年経つとは言え、

貧血も普通はここまで悲惨な数値にはならないんですけど、体の中でうまく切り替えができていないところがあって
胃がないことを補えていないから

皮膚にも栄養がいかない状態になって白斑が出て、免疫力が低下しているから普通だったらなんでもないような摩擦や外部からの刺激に反応して
紅い斑点ができてしまったりしている」

と、言われました

 

あと、この数値が低いとストレスに対応できず、うつ状態になってしまったりするらしく

私が去年職場のストレスで1か月ずっと微熱が続いて下がらず、抗うつ剤飲みながら会社に行っていたのも

だからか…

 

私がこんなに適応できないことってなかったのになんでだろう…?って悩んでいたけど

その他、婦人科系のこととかもぜーんぶ納得

すべてはつながっている

coolpassion.hatenablog.com

 

胃全摘の術後、時間が経過するにつれ減少していく
体内の貯蔵鉄 フェリチンが底をついてしまったみたい

 

欧米ではフェリチン100以下だと妊娠の継続が許可されないらしいけど

私、半年前の血液検査の結果が5…だったのを知って愕然とする

5って…これでも、2ヶ月に1回くらいのペースで筋肉注射で鉄剤打っているのにな

ネットで調べると出てくるのは

 

海外の多くの文献は、フェリチン値が30ng/dl以下では、貧血の症状がない場合でも、母体や産まれてくる赤ちゃんに重大な障害があることを明らかにしています。

 

とか

フェリチンの値ですが、5ng/mL以上が正常と言われていますが、10ng/mL以下になっている状態の場合、妊娠の可能性はほとんど見込めないといわれています。 妊娠を望む人の血中のフェリチンの数値は報告により多少バラツキがありますが、最低でも30ng/mLから50ng/mLは必要という報告、常時50ng/mL程度以上に維持した方がよいという報告、さらに60ng/mL以上が必要という報告があります。

 

 

先生には「まずは1年かけて倍にしたいですね」と言われた

1年で倍?それでもやっと10でしょ?

30になるまで5年とかかかるんだろうか?


もうそれを聞いたらただただ脱力して

何もする気が起きなくなった

 

誰とも話したくなくなって

部屋の隅っこで体育座りしてただただ鬱々として1週間くらいぼーっとしていた

 

今までの人生を振り返りながら

あの時に別の選択をしておいたらよかったんだろうか?とかぐるぐるいろんなことを思い出してはため息をつく

 

こんなにがっかりしている自分に驚いた

そしてちょっとずつその事実を受け入れて

こればっかりは自分ではどうにでもできないこと

神様が決めたことだと諦めることにした

 

これってガンの告知された時と同じ心境だった

 

話は断捨離に戻り・・・

そんな経緯があって、気持ちを切り替えたいという思いもあり

猛烈に断捨離したくなってきた

 

捨てるのは簡単だけど、もしまだ使ってくれる人がいるなら譲りたいな

メルカリって最近よくみんなやっているみたいだけど

どうなんだろう?

 

友人の話を聞いて興味を持ってから、なんとか自分にやる気を出させる為に

とりあえずアカウントを登録して、無料のオンラインメルカリ講座に参加してみた。

 

まずは簡単な本から出品して、えー!こんなに簡単なんだ!って驚き

少しずつ身の回りのものを出していくことにした。

 

出品するためそのモノの良さを書き、手入れをして、思い出に浸りながら、次の人に大事にしてもらえるようにって願う。

 

不思議なことに手放していくたびに、心は軽くなり、満たされていった

 

自分のモノを引き取ってくれた人とのメッセージのやり取りが、想像もしていなかったけれど

じんわり温かい気持ちにさせてもらうことが度々あった。

 

娘さんの成人式の着物用に私の未使用の帯締めを選んでくれた方の話を聞いて

「あぁ、私が二十歳の時お母さんは今の私の歳と一緒かぁ。私にも成人式を迎える子どもがいたかもしれないんだなぁ。」

 

一度も会ったことがない人のお子さんだけど、成人式に私が若い頃に自分で買った帯締めをつけてもらえると思うと、ウキウキしてきた。

 

私が気に入っていた花器を引き取ってくれた方からは

「とっても素敵で大満足です。飾っているだけで日々の暮らしが豊かになりそうです」なんて言ってもらえたり

 

私が5年間使い込んだキックボクシングのグローブも引き取ってくれた人がいてみんながびっくり。モノの価値って本当に人それぞれだ。

 

まるで生前形見分けしているような気分になってきている中

ふと思い浮かんだ「臓器提供」

今ならしっかりと自分の意思で選択できると思った。

 

脳死についてやどんなシステムになっているのかとかを調べて、自分に当てはめて想像してみた。

心臓って50歳くらいまでしか提供できないんだ。知らなかった。

www.jotnw.or.jp

 

臓器を提供する場合、臓器提供適応基準では、おおよそ心臓50歳以下、肺70歳以下、腎臓70歳以下、膵臓60歳以下、小腸60歳以下が望ましいとされています。
しかし、この年齢を越えた方でも、医学的に提供が可能である場合もあります。
健康保険証や運転免許証等の意思表示欄に記入した意思はいつ活かされるかわかりませんので、年齢に関係なく、現在の意思を記入してください。

 

臓器移植をしたら、臓器を提供した人の記憶が移植された人に転移したっていう報告が結構あるとかそんな記事も読んで、科学ではまだ証明されていないことってきっとあるんだろうなって思った。

 

脳死については自分の意志もあるけど、残された家族のことを考えると、その決断をさせないといけないのって辛いよねって妹とも話した。

 

そしてやっと保険証の裏に自分の意思を書いた。

提供したくない臓器には×をした。

今の自分の意思。また変わったら書き直せばいい。

 

署名年月日:2021年12月2日 術後10年の日

 

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